ランスへの旅 Il viaggio a Reims

 

作品

作者:フランスの作家スタール夫人「コリンヌ、あるいはイタリア」から着想
正式名:ランスへの旅、または黄金の百合咲く宿
台本:ルイージ・バロッキ
作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ
言語:イタリア語
演奏時間:2時間40分
舞台:フランスの保養地プロンビエールにあるホテル「黄金の百合」
 (フランス国王の紋章はフルール・ド・リス)

国王の戴冠式が行われるランスへの旅をめぐるドタバタ劇。

オペラの復活

「ランスへの旅」フランス国王シャルル10世(1757-1836)の戴冠式を記念して1825年に作曲された
初演はカンタータ形式で行われたため「劇的カンタータ」と呼ばれることもある。
ロッシーニは再演を認めなかったため、このオペラは歴史に埋もれていく。
しかし、1970年代に楽譜の研究・復元が進み、
作曲から159年経った1984年にペーザロにおいて復活上演された

アルベルト・ゼッダ

このオペラの復活に力を注いできたのが、ロッシーニ研究の権威で指揮者のアルベルト・ゼッダである。

「ランスへの旅」は驚くべき作品です。登場人物は多いし、はっきりしたストーリーがなく、劇場での上演が難しいオペラです。3時間のうちに17人もの人物が次々と登場するのですから。たとえ音楽が美しくても、この風変わりなオペラの上演は不可能だと考えていました。けれど驚くことに「ランスへの旅」の上演は世界的に多くなっているのです。

ロッシーニの魅力は、何かが起こったとき人の心がどうなるか・・・その表現が簡潔なところです。彼のキーワードは「軽快さ」です。 (アルベルト・ゼッダ氏の言葉)

「楽観的に現実を捉えること・・・それが人生の助けになる!」
これが今生きている私たちへのロッシーニからのメッセージである。

ランス大聖堂

歴代フランス国王の戴冠の秘蹟を授ける聖別式が行われる由緒ある大聖堂。
816年にルイ1世が初めて戴冠式を行ってから、1825年のシャルル10世に至るまで、
25人の王がこの大聖堂で聖別を受けた。ルイ14世、ルイ16世もこの大聖堂で戴冠している。
⇒tabi-taroサイト「大聖堂、果てしなき世界」はこちら

ランス、ノートルダム大聖堂


 

シャルル10世(1757-1836)

復古王政のブルボン朝最後のフランス国王。
即位以前にはアルトワ伯爵の称号で呼ばれる。

兄のルイ16世とは不仲であったが、王妃マリー・アントワネットとは遊び仲間。
フランス革命が勃発するとイギリスに亡命。
ナポレオンの失脚の後、フランスに帰国。
1824年、ルイ18世が死去すると、国王シャルル10世として即位するが、
ルイ14世時代の絶対王政復活を目指すなど、兄以上の専制政治を行ったため、
7月革命が勃発(1830年7月27日)。

この革命により、シャルル10世は再びイギリスに亡命し、
オルレアン家のルイ・フィリップが国王となり、ブルボン家の王位は失われた。

⇒オペラ「ラ・ボエーム」
ショナールが投げ捨てる銀貨にはルイ・フィリップの肖像が描かれている。

 

晩年は新たな受け入れ先となったオーストリアで過ごすが、コレラにかかって死去。
フランスの歴史団体は、ブルボン朝の王で唯一フランス国内に埋葬されていないシャルル10世の遺骸を母国に戻すよう運動を行っているが実現していない。


 

登場人物と関連するオペラ

⇒オペラ「トスカ」
ナポレオンはイタリア統治のため、イタリア各地に「共和国」を建国。
当時、ナポリ王国はハプスブルク家のマリー・カロリーナ(1752-1814)(マリア・テレジアの娘)が嫁いでいたため、ローマ教皇のお膝元ローマはナポリ駐留のオーストリア軍が守っていた。
エジプト遠征の後、フランスで実権を握り第一統領に上り詰めていたナポレオンは、再度イタリアに侵攻し、簡単にミラノを陥し、1800年6月14日、イタリア北部マレンゴにてオーストリア軍と対峙した。「マレンゴの戦い」

⇒オペラ「フィガロの結婚」

貴族の横暴を平民が懲らしめるという内容にフランス国王ルイ16世は激怒。一旦は上演を禁止したが、王妃マリー・アントワネットが上演をねだり、また貴族たちも自分たちをコケにする話しをブラックジョークとして面白がり、ついに上演が解禁された。
しかし、結果的にはルイ16世が心配したとおり、フランス革命への引き金を引くことになる。
因みにモーツァルトが仕えたオーストリアの皇帝ヨーゼフ2世はマリー・アントワネットのお兄さんです。


 

台詞集

場面

配役 台詞 解説
第2場 トロムポノク男爵

失神(シンコペ)ですな。そうシンコペーション。
みな使ってます。モーツァルト、ハイドン、ベートーベン。バッハも。
「グラン・パルティータ」で使ってる。

グラン・パルティータ
モーツァルト作曲、セレナード第10番変ロ長調(K/361)。13管楽器のためのセレナードとも呼ばれる。

第3場 コリンナ

神聖な未来が待ち受けています。
テベレ川からエルサレムまで勝利の予兆であり、平和と栄光のシンボルとして十字架が輝くでしょう。

1782年、ギリシャで聖歌集「フィロカリイア」が出版され、美を愛し、神を賛美するこの聖歌集は各国の言葉に訳され停滞していた教会内で信仰の再興に繋がった。

第4場 コリンナ⇒デリア

ギリシャはキリスト教国の応援を受けて独立できそう。あなたの祖国もようやく安定するようね。

ギリシャ独立戦争
ギリシャは1821年に独立宣言をしてオスマン帝国との戦闘を開始した。独立は1832年6月のコンスタンティノーブル条約で正式に承認された。
ギリシャでは1821年3月25日を独立記念日としている。

第5場 コリンナ

パリスの審判に混じってもアフロディテに勝ったでしょうね

トロイ王の息子パリスが三人の女神たち(三美神)のうちで誰が最も美しいかを判定した。
結局、賄賂を使ったアフロディテが勝利した。
パリスのアトリビュートは黄金の林檎
アフロディテのアトリビュートはエロス(キューピッド)

第5場 コリンナ

心からの愛情と純粋な誠実さだけが女の愛を受けるに値する

愛を迫るベルフィオールに対してコリンナが言う名言

第6場 ドン・プロフォンド

ゲストの所持品目録

ドン・プロフォンド 比類なきメダル、貴重なカメオ、崇高なる骨とう品
スペイン(ドン・アルバーロ) 先祖の業績が掛かれた家系図、字架、ペルー産の真珠
ポーランド(メリベーア公爵夫人) 色絵付の豪華本、スコット「湖上の美人」
フランス(フォルヴィル伯爵夫人) アフロディアの秘宝の隠し場所、羽根つき帽子
ドイツ(トロンボノク男爵) 古代ギリシャの論文、ホルンとトロンボーンのための習作
イギリス(シドニー卿) 世界周航記、紅海に関する論文、アヘン
フランス(騎士ベルフィオール) リトグラフ、絵筆と鉛筆、彩色した貝
ロシア(リーベンスコフ伯爵) シベリア全土の地図、黒テンの毛皮
第7場 ドン・プロフォンド

国王がパリに戻り次第、祝典が開かれる。
外国人も押し掛けるだろう。

ランスでの戴冠式の後、パリでも祝宴が開かれた。
第8場 メリベーア公爵夫人

嫉妬に目がくらんでいるのね
暗闇の精エレボスが乗り移ったのかしら

エレボスとはギリシャ神話の神。
地下世界を支配し、地下の暗黒の神である。
ギリシャ神話における三柱の神=
ガイア(大地)、ウラノス(天空)、エレボス(暗黒)

 

晩餐会で歌われる賛歌の意味(歌唱順)

配役

国旗 賛歌 解説 曲名
トロムポノク男爵

ドイツ賛歌
ヨーロッパの進む道が絶えらざる幸福たらんことを

乾杯の音頭に続いてドイツ国歌に合わせてヨーロッパの調和を賛美

♪今こそ王が民衆を束ね

メリベーア公爵夫人

ポロネーズ
祖国のため、王位のため、信仰と名誉のため

いかなる時にも国を守る勇敢な兵士たちを賛美

♪勇敢な戦士たちよ

リーベンスコフ伯爵

皇帝陛下帰還の歌
高貴なるアングレーム公妃マリー・テレーズへ名誉を栄光を中世の誓いを

ロシア皇帝の帰還を祝った時のメロディーにのせて

マリー・テレーズ・ド・フランスはルイ16世とマリー・アントワネットの長女

♪名誉、栄光、そして最大の敬意を

ドン・アルヴァーロ

スペインの名曲
アングレーム公ルイ・アントワーヌへ忠誠の誓いを
スペインを高貴な光で輝かせたあの方に
スペインの内乱を収め、王座の名誉を救い人民の尊敬を一身に集めた

ルイ・アントワーヌはシャルル10世の長男でマリー・テレーズと結婚

1823年、フランス軍はトロカデロの戦いでスペイン国王フェルナンドを釈放した。

♪崇高な指導者に敬意を

シドニー卿

ゴッド・セイブ・ザ・キング
黄金の木から生えた大切な芽である王太子アンリ・ダルトワを天よお守りください
忠誠心に満ちた幸福な人々の願いに運命の女神が微笑みますように

イギリス国歌に乗せて

アンリ・ダルトワはシャルル10世の孫でブルボン家最後の王位継承候補だったが王政復古が実現することは無かった。

♪命の樹木の大切な芽を

フォルヴィル伯爵夫人と
騎士ベルフィオール

二重唱
フランス人の名誉と希望である王太子の母マリー・カロリーヌが親しみあふれる天のおぼしめしに満たされますように
たぐいまれな美徳と花のような若さに輝きあらゆる者の胸に敬慕と愛情を呼び起こします

マリー・カロリーヌ:ド・ブルボン(1798-1870)はフランチェスコ1世の子で、アンリ・ダルトワの母

♪新しいエンリーコの母君が

コルテーゼ夫人と
ドン・プロフォンド

二重唱
ブルボン王家は祖国の誇り
ブルボン王家は永遠にフランス人の愛と希望です

夫人の出身地であるチロルのリズムで新王の未来を祝福

♪より活気ある、豊かな

コリンナ

フランス王シャルル10世
喜びの夜明けがこれほどに甘美なのはフランスにとって初めてのこと
無上の感謝を込めて尊び敬慕いたします
あふれる善の持ち主、王シャルルを

百年また百年・・・わたしたちは常に守られるのです不滅の神聖なるおぼしめしに
幸せにお過ごしください 愛するシャルル
シャルルはフラン人にとって愛と喜びそのもの

くじ引きで選ばれた即興詩のテーマは「フランス王シャルル10世」

♪黄金の百合が落とす快い影に

全員  

大合唱
愛する国王万歳 王のお姿は喜びと愛の予兆
ひとの胸に敬慕と熱情をかきたてる

緑の茎に絶えず黄金の百合が花をつけ
天のおぼしめしがそこに満ちますように

フランス万歳 勇敢なる国王 万歳

フィナーレまで10分間の壮大なロッシーニ・クレッシェンドが続く


 

 

日本での上演と配役

かっぱ橋歌劇団第8回公演 B組フィナーレ

配役 役柄  

2015年
7月5日
日生劇場

2019年
9月5日
新国立劇場

2019年
9月8日
新国立劇場

2019年
11月16日
サンパール
荒川A

2019年
11月16日
サンパール
荒川B

指揮者

    アルベルト・
ゼッダ
園田隆一郎 箕輪健太

ピアノ

土屋麻美 河崎 恵
コリンナ ローマの女流即興詩人 S 佐藤美枝子 砂川涼子 光岡暁恵 高津桂良 刈田享子
メリベーア公爵夫人 ポーランド出身
イタリアの将軍の未亡人
MS 鳥木弥生 中島郁子 富岡明子 斎美希子 久利生悦子
フォルヴィル伯爵夫人 ファッションに夢中な
若き未亡人
S 光岡暁恵 佐藤美枝子 横前奈穂 宍戸美法 鈴木昌子
コルテーゼ夫人 温泉宿「金の百合亭」の
女主人
S 清水知子 山口佳子 坂口裕子 上木由里江 小田嶋薫
騎士ベルフィオール フランスの若き士官 T 小山陽二郎 中井亮一 糸賀修平 勝又康介 佐藤慈雨
リーベンスコフ伯爵 ロシアの将軍 T 山本康寛 小堀勇介 山本康寛 宗像成弥 川野浩史
シドニー卿 イギリスの軍人 BR 伊藤貴之 伊藤貴之 小野寺光 奥村泰蔵 神田宇士
ドン・プロフォンド 文学者、骨董マニア B 久保田真澄 久保田真澄 押川浩士 金子亮平 伊東達也
トロムポノク男爵 ドイツの少佐
音楽愛好家、会計係
B 三浦克次 谷 友博 折江忠道 平岩英一 青木貴義
ドン・アルバーロ スペインの提督 BR 牧野正人 須藤慎吾 上江隼人 吉川賢太郎 吉川賢太郎
ドン・プルデンツィオ 「金の百合亭」の医者 B 柿沼伸美 三浦克次 田島達也 中原和人 高橋雄一郎
ドン・ルイジーノ フォルヴィル夫人の従弟 T 真野郁夫 井出 司 曽我雄一 坪内 清 坪内 清
マッダレーナ 「金の百合亭」のチーフ S 河野めぐみ 牧野真由美 橋未来子 岩本久美 八方久美子
モデスティーナ フォルヴィル夫人の召使 S 但馬由香 丸尾有香 田代直子 鈴木千鶴 宮下 麗
アントニオ ホテルのボーイ長 B 立花敏弘 岡野 守 田村洋貴 五島泰次郎 五島泰次郎
デリア ギリシャの孤児 S 山口佳子 楠野麻衣 中井奈穂 -

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ゼフィリーノ

世話人 T 藤原海考 山内政幸 有本康人 -

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