宗教画理解の手引き


 

第六章 十二使途と四大福音記者

十二使徒 

最後の晩餐に描かれている順番(左から)

1.バルトロマイ(BARTHOLOMEW)

2.小ヤコブ(JAMES THE LESS)
エルサレムの司教として活躍し、そこで殉教。コン棒を持って立つ図が多い。

3.アンデレ(ANDREWS)
ペテロの弟。ネロ皇帝の時代、ギリシャのパトラスでX字型の十字架にかかって殉教した。スコットランドの守護聖人=ユニオンジャックの旗の中にX字型の十字

4.イスカリオテのユダ(JUDAS ISCARIOT)
裏切り者ユダ。「わたしは罪のない人の血を売り渡し、罪を犯しました」と言って銀貨30枚を神殿に投げ込んで立ち去り、首を吊って死んだ。そのため、小さな皮袋を握り締めているのはイスカリオテのユダを示すシンボルである。

5.ペトロ(PETER)
もともとはシモンという名のガリラヤ湖の漁師。イエスはこのシモンをペトロ(岩)という名に変え、一番の弟子とし、天国の鍵を与え、その岩の上に私の教会を建てよと宣言した。彼が逆さ十字架にかけられたバチカンには世界最大のキリスト教会「サン・ピエトロ寺院」が建っている。大きな鍵を持っている聖人の像があれば、それは聖ペトロである。

マタイ福音書16章
あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。わたしはあなたに天国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。

右手に大きな鍵を持つペトロ (サン・ピエトロ大聖堂)

金・銀の鍵が交差するバチカン市国の国旗

6.ヨハネ(JOHN THE EVANGELIST)
洗礼者ヨハネと区別して福音記者のヨハネと呼ばれる。多くの最後の晩餐の絵で、イエスのすぐ隣に座り、イエスにもたれかかって眠っているのがヨハネ。
エーゲ海のパトモス島で
「黙示録」を、エフェソスで「ヨハネ伝」を書いたといわれる。
ヨハネはその
エフェソスで死に、その墓の上に教会が建てられた。

7.トマス(THOMAS)
「疑いのトマス」として知られる合理主義者。大工の曲尺とか定規を持って描がかれることが多く、建築家や幾何学者などの守護聖人

不信のトマス
「あの方の手足に釘の跡を見、わき腹の槍傷に自分の手を入れてみないことには復活したとは信じられない」(ヨハネ伝20章)

8.大ヤコブ(JAMES THE GREAT)
=ゼベダイの子

エルサレムで殉教したが、遺体はスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラに埋葬されている。イスラム教に対するキリスト教の守護者。フランス語ではサン・ジャック(帆立貝の意)

9.ピリポ(PHILIP)

10.マタイ(MATTHEW)
銀行や税務暑の守護聖人で財布がシンボル

11.タダイ

12.熱心党(ゼロット)のシモン(SIMON THE ZEALOT)
べツレへムの馬小屋へ、天使に導かれて最初にキリストの誕生を見に行った羊飼いの一人。


その他文献によって十二使途に加えられるのは・・・

マツテヤ(MATHIAS)
ユダの代わり、チョット待ってや!

ヤコブの子ユダ(JUDE)  
タダイの代わりにヤコブの子ユダを12使途に数える福音書もある新約聖書の「ユダの手紙」の筆者。絶望の渕にあえぐ者の守護聖人

 

四大福音記者

福音「とは「良い知らせ」という意味。 GOOD NEWS  THE GOSPEL
EVANGEL(福音、福音書) EVANGELIST(伝道者、福音書の記者)
PROPAGATION(布教)
洗礼を受ける(be baptized) 洗礼者(baptist) 洗礼名(Christian name)

イエスの弟子たち(12使徒とは別人と考えられている)によるイエス伝。
救世主イエスの生涯を綴った書物が福音書(喜ばしい知らせ)である。

マルコ(MARK)による福音書 翼のあるライオンがシンボル
最後の晩餐が行なわれたのも彼の家だとされる。
エジプトの
アレキサンドリアに渡って教会のために働き、この地で殉教。
その亡骸をヴェネチアの市民たちは持ち帰り、サン・マルコ寺院
に埋葬した。こうして福音書記者マルコはヴェネチア共和国の守護聖人となっている。

ベニス、ドゥカーレ宮殿の翼のあるライオンのレリーフ

マタイによる福音書 天使がシンボル
マタイ伝はユダヤ人を対象にして、イエスがキリスト(救世主)であることを説得しようとして書かれたもの。
マタイ伝第一章の初めにはイエスの系図が長々と記載されている。アブラハムから14代目の子孫がダビデ、ダビデからさらに何代も人名が続く。最後にマリアの夫ヨセフ、そしてマリアからキリスト(救世主)であるイエスが生まれた、と書かれている。日本人好みの格調高い名文がマタイ伝の特徴である。

●すべて色情をいだきて女を見る者は、既に心のうち姦淫したるなり

●目には目を、歯には歯を、と言えることあるを汝ら聞けり。されど我は汝らに告ぐ。人もし汝の右の頬を打たば、左をも向けよ。汝を訴えて下着を取らんとする者には、上衣をも取らせよ。

●汝ら見られんがためにおのが義を人の前にて行わぬように心せよ。さらば施しをなすとき、偽善者が人にあがめられんとて会堂や街にてなすごとく、おのが前にラッパを鳴らすな。汝は施しをなすとき、右の手のなすことを左の手に知らすな。

●何を食らい、何を飲まんと生命のことを思い煩うな。汝らのうち誰が思い煩いて身のたけ一尺を加え得んや。またなにゆえ衣のことを思い煩うや。野の百合はいかにして育つかを思え。労せず、紡がざるなり。されど栄華を極めたるソロモンだに、その装いこの花の一輪にもしかざりき

●狭き門より入れ。滅びに至る門は大きく、この路は広く、これより入る者多し。生命に至る門は狭く、その道は狭く、これを見出すもの少なし。

ルカ(LUKE)による福音書 雄牛がシンボル
医者の守護聖人。東京聖路加病院は彼の名にちなむ。よく知られるクリスマスの物語、イエスが馬小屋で生まれ、飼馬おけの中に寝かされたことなどはルカ伝に出てくる話。

ヨハネによる福音書 鷲がシンボル
ヨハネ伝は最も遅く、1世紀末から2世紀初め頃に成立したと考えられている。
イエスが神の子であり、人類の救い主キリストであるという論を、ギリシャ哲学風に構築したもの。

●初めに言葉あり、言葉は神と共にあり、言葉は神なりき。この言葉は初めに神と共にあり、よろずの物これに由りて成り。これに生命あり、この生命は人の光なりき。
もろもろの人を照らすまことの光ありて、世にきたれり。世は彼に由りて成りたるに、世は彼を知らざりき。

 

聖人

人々は聖人にあやかって自分の子供に命名した
フアン(ファナ)、ジョバンニ(ジョバンナ)、ジャン(ジャンヌ)、ヨハン(ヨアンナ)、ジョン(ジェーン)など。例えばニコラと命名すると、聖ニコラはその子の生涯にわたる守護聖人となる。

聖ニコラウス
ギリシャ神話のアフロディア信仰を引き継ぎいで「船乗りの守護聖人。

聖ジョージ
イングランドの守護聖人

聖イシドロ
マドリードの守護聖人

聖ルカ
医師の守護聖人

 

キリスト教の祝祭日

日付
★=移動祝祭日
行事
内容

1月1日
または2日

主の割礼祭、または聖大ワシリィ祭、主の命名祭、神の母聖マリア祭。 主の誕生から8日目の割礼日を記念する。この日にイエスと名づけられたことから祝われる。
1月6日 エピファニー
御公現の祝日
聖母マリアが幼子イエスを始めて人々に拝ませた日
イエスがヨルダン川でヨハネから洗礼を受け、初めて人々に教えを説く生活に入った日
エピファニーとはギリシャ語で現れ出でるの意
東方三博士が馬小屋でイエスを拝した日
1月7日〜3月4日 謝肉祭 公現祭から四旬節の前日まで。
2月2日 マリア聖燭節 キリスト降誕から40日目。聖母マリアの浄化とイエスの神殿詣でを記念する祝日。古代ローマの祭りをキリスト教化したもの。
★木曜日 カーニバル前夜祭 灰の水曜日の前週の木曜日が前夜祭。大齋に入る直前
ゲーテの「イタリア紀行」などで有名なローマのカーニバルは、イタリア統一の際に廃止された。
3月4日

★火曜日

肉の火曜日マルディ・グラ 謝肉祭の最終日。四旬節を前に肉の食べ納めをする。この祭りは、ブラジルならばカーニバルで有名であり、米国ルイジアナ州ではマルティ・グラとして有名。マルディ(火曜日)、グラ(脂っこい)
3月5日

★水曜日

灰の水曜日
アッシュ・ウエンズデイ
この日、カトリック教会では司祭が信者の額に灰で十字を描き、人間が塵から生まれ塵で帰るべき存在であることを思い出させる。復活祭から遡って7週目の水曜日が初日
イエスが公生活(人々に教えを説く生活)を始めるに当たって、まず最初にヨルダン川でヨハネから洗礼を受け、次いで荒野で40日間断食したことをしのんで、キリスト教徒は皆この大齋の40日間肉食を控える。
3月5日〜4月19日 四旬節 灰の水曜日から復活祭までの、主日を除く40日間の斎戒期。キリストが荒野で40日間断食をしたことにちなむ。
4月13日

★日曜日

シュロの日曜日
パームサンデー
主イエスがエルサレム入城をすることを記念したもの。エルサレム入城
弟子たちは行って、ロバを引いて来て、その上に服をかけると、イエスはそれにお乗りになった。大勢の群衆が自分の服を道に敷き、また、ほかの人々は木(シュロ)の枝を切って道に敷いた。
4月17日(木) 過越しの祭り 主イエスが弟子達と最後の晩餐を行った日。木曜日であることに注意。
4月18日

★金曜日

聖金曜日
(Good Friday)
主が十字架に架かった金曜日。そして埋葬の日。
4月20日

★日曜日

復活祭
イースター
主が復活した日。また、春分後の最初の満月の後の日曜日。
5月26日〜28日 祈願祭 主の昇天祭直前の3日間に行われる豊作祈願祭。古代ローマで収穫の女神ケレスに捧げられていた祭りをキリスト教化したもの。
5月29日

★木曜日

昇天祭 復活祭から40日目の木曜日。キリスト昇天の奇跡を祝う。イエスが昇天したと伝えられる所はエルサレムのオリブ山にあり、小さな御堂が建っている。
6月8日

★日曜日

聖霊降臨祭
ペンテコステ
復活祭から50日目の日曜日。「ペンテコステ」はギリシャ語で50番目という意味。主イエスが昇天した後、弟子達に聖霊を下された日である。

五旬祭の日が来て、一同が一つになって集まっていると、突然激しい風が吹いて来るような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。そして、炎のような舌が別れ別れに現れ、一人一人の上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、霊が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした。

⇒エル・グレコ 「聖霊降臨」

6月15日

★日曜日

トリニティサンデイ
三位一体の日曜日
聖霊降臨祭の次の日曜日。
6月19日

★木曜日

キリストの聖体祝日
(Corpus Christi)
コルプス・クリスティ
三位一体祝日直後の木曜日。
8月15日 聖母被昇天節 聖母マリアが天にあげられた日を記念して、どの教会でも盛大なミサがあり、商店は休みとなる。

11月1日

万聖節、諸聖人の日。
(All Saints Day)
すべての聖人の魂を記念する日。日本のお盆の感じ。
★クリスマス前 待誕節(アドベント) クリスマス前の3週間(または4週間)。悔い改めの時期。
12月25日 クリスマス降誕祭 325年、小アジア、ニケアで開かれた宗教会議の結果、12月25日をキリストの誕生日と定めた。キリストの降誕を祝う。元は、謝肉祭の起源となった、古代ローマのサトゥルヌス祭が12月24日に終わり、「不屈の太陽の誕生」を祝う12月25日のお祭りに、主の誕生日が当てられた。これは、元は光の神ミトラ神の誕生日であった。
12月29日(日) 聖家族日 降誕後の第一主日。

12月31日

サン・シルヴェストルの夜 ガラ・ディナー・パーティ

ヨーロッパのカーニバル情報 by