フィガロの結婚 台詞の理解
前作「セビリアの理髪師」の続編 「セビリアの理髪師」は、貴族の孤児ロジーナが、後見人である医師のバルトロによって監禁され、無理やり結婚させられそうになるところを、街の何でも屋で床屋のフィガロの知恵と策略でバルトロをやりこめ、ロジーナに恋するアルマヴィーヴァ伯爵とめでたく結婚するという話。 これが縁でアルマヴィーヴァ伯爵に仕えることになったフィガロが、伯爵夫人付の美人で既知に富んだメイド、スザンナと結婚式を挙げる一日の物語。 伯爵のもくろみを粉砕するための計画と結果。 作戦2;スザンナを装った美少年ケルビーノを女装させて伯爵と逢引させ、その浮気現場を伯爵夫人に抑えさせる。 作戦3;作戦2を修正し、ケルビーノの代わりに伯爵夫人がスザンナに変装して伯爵と逢引し、伯爵の浮気心を暴き、悔い改めさせる。 |
第一幕
シーン | 配役 | 台詞 | 状況 |
第1場 | スザンナ |
あたしは幸せだわ 結婚式の日はもうすぐ |
スザンナはフィガロとの結婚を楽しみにしている |
スザンナ |
あたしの戸口に 悪魔が親愛なる伯爵様を連れて来たとしたら |
伯爵が自分を狙っていることをフィガロに伝える | |
スザンナ |
伯爵さまは 外国での狩りに飽きたのよ 美しい異国の女たち相手のね |
スザンナは伯爵が廃止したはずの初夜権を復活させて自分を口説いていると言ってフィガロを驚かせる |
|
スザンナ |
あたしの歌の先生で 伯爵の腰巾着が 私の貰った持参金をまた戻そうとしてるみたいなの あたしを復活第一号にして |
ドン・バジリオは持参金を狙っている | |
第2場 | フィガロ |
あなたが大使で 俺は使い走り それからスザンナが |
事の重大さに気づいたフィガロは、知恵を絞って伯爵の下心をくじいてやると独白する |
第3場 | マルチェリーナ |
お医者さま わたしゃまだ諦めていないんですよ |
侍女頭のマルチェリーナはこの結婚を壊して自分がフィガロと結婚するつもりだと、バルトロに協力を求める |
わたしと彼の間にゃこの契約の他にも別の契約が |
マルチェリーナは以前フィガロに金を貸し、金を返せなければ結婚するという証文を書かせていた |
||
第4場 | バルトロ |
なかなか味わい深いことじゃな わしの老女中を押し付けるというのは
かつてわしから彼女を奪った奴に |
セビリアの理髪師ではロジーナの後見人だった医者のバルトロはかつての恋路を邪魔された恨みを晴らせると喜ぶ |
マルチェリーナ |
くやしー! 殴りかかりそうだわ これ以上ここにいたら。 |
マルチェリーナはスザンナをいじめようとするが、スザンナに言い負かされて怒って退散する |
|
第5場 | ケルビーノ |
伯爵が昨日 ぼくをクビにするって もしも伯爵夫人さま お取りなしで許してもらえないと ぼくは追い出されて もう君にも会えないんだ |
ケルビーノは庭師の娘バルバリーナに手を出して伯爵の不興をかったので、奥様に取りなしをして欲しいとスザンナに頼む |
お返しにほら ぼくのこの歌を君にあげるから |
伯爵のリボンをスザンナから奪ったケルビーノはお礼に自分の歌をスザンナに渡す |
||
分からないんだ 僕が何者で何をしようとしてるのか ♪06 K=自分で自分が分からない |
思春期真っ只中のケルビーノは、どんな女性を見ても心がときめくと歌う |
||
第6場 | スザンナ |
なんなの!伯爵だわ、困った! |
伯爵が来る気配にケルビーノは肘掛椅子の後ろに隠れる |
伯爵 | あの後ろに隠れよう |
伯爵はスザンナを口説き始めるが、音楽教師バジリオが来るので慌てて椅子の後ろに隠れる |
|
第7場 | バジリオ |
あいつの奥様を見る視線 あまりに頻繁だし それにかなり好色だ |
バリジオは伯爵が居るとも知らず、ケルビーノがロジーナに色目を使っていると話す |
伯爵 | 何と言った!すぐに行ってその女たらしを叩き出せ | 伯爵は怒ってケルビーノの追放を命じる | |
伯爵 |
お前の従妹のところで ノックしたら バルバリーナが開けてはくれたが そこにあの小姓めが隠れておったのだ... |
ケルビーノはバルバリーナの所にも通っている | |
バジリオ | Così fan tutte le belle; non c'è alcuna novità! | コジ・ファン・トゥッテの題名となった台詞 | |
ケルビーノ | 出来る限り聞かないようにしてました | 隠れていたケルビーノが見つかってしまう | |
第8場 | フィガロ |
殿の賢明さの最初の果実を今日私どもが頂きます |
農民たちが登場し、初夜権を廃止した伯爵の徳を讃える |
伯爵 |
祝宴を開くことを約束しよう だがもう少し待ったくれ |
フィガロは結婚式を急ぎたいが、下心のある伯爵は時間稼ぎを図る |
|
フィガロ |
恋の蝶々よ、もうこれからは飛び回ることは出来ないぞ |
ケルビーノは罰として軍隊行きを命じられる |
第二幕
シーン | 配役 | 台詞 | 状況 |
第1場 | 伯爵夫人 |
おお 私に愛する人を返してください さもなくば私を死なせてください |
伯爵夫人は伯爵の愛が醒めていうことを嘆く |
伯爵夫人 |
現代の夫は 本質的に 不実だけと 気まぐれで なのにプライドが高く 嫉妬深いのよ |
モーツァルトの女性観1 | |
フィガロ |
作戦は次の通りです バジリオを介して手紙が 殿さまのところに届くようにして 約束のあることを知らせるんです |
フィガロは伯爵に初夜権を使わせない計画を語る |
|
フィガロ |
伯爵に お前はすぐに言うんだ 今晩 庭で待っててくださいと |
逢引にはスザンナではなく女装のケルビーノを行かせて伯爵に恥をかかせようと計画を語り、夫人はこの計画を受け入れる |
|
第2場 | ケルビーノ |
女性のみなさん 見てください |
ケルビーノは憧れの伯爵夫人に自作の歌を披露する |
スザンナ |
背丈は同じくらいだわ そのマントを脱いで |
スザンナはフィガロの計画に従ってケルビーノを女装させる |
|
伯爵夫人 | 急いでて忘れてるわ 印鑑を |
伯爵夫人はケルビーノが持つ辞令に印鑑がないことに気づく |
|
ケルビーノ |
一本のリボンが... 髪を結わえたり...肌に触れたりするんです... ある人の |
ケルビーノは伯爵夫人にも恋焦がれている | |
第3場 | 伯爵 |
どうしたのだ 自分の部屋に鍵をかけるなど! |
バリジオから渡された諾名偽手紙に驚いた伯爵が急に狩りから戻ってくる |
伯爵夫人 |
危険にさらすつもりですか?女性の名誉を。 |
夫人はスザンナが花嫁衣裳を試していると言って扉を開けず、間男を疑う伯爵と口論になる |
|
第4場 | ケルビーノ |
下は植木鉢や花のプランターだ そんなに痛くないよ |
伯爵が衣裳部屋の鍵を壊そうと道具を取りに行っている間に、ケルビーノは窓から庭へ飛び下りて逃げる |
第5場 | 伯爵 | やはりスザンナではないのだな! |
道具を手にした伯爵が戻ると、観念した伯爵夫人は中にいるのはケルビーノだと告げる |
伯爵 |
これで疑問が氷解したぞ これが罠だな これが悪だくみだな 手紙に書かれていた |
悪だくみを知った伯爵は怒りを爆発させる | |
第7場 | 伯爵 | 何たる衝撃!頭がぐちゃぐちゃだ! |
衣装部屋の中から出てきたのはスザンナに夫妻は驚く |
第8場 | 伯爵 |
フィガロの手紙ですわ バシリオからあなたに渡されたのは |
夫人は元気を取り戻し、詫びる伯爵に、あれはあなたを試すお芝居だった、偽の手紙もフィガロが書いたものだと言う |
伯爵夫人 |
許される資格はありません 他の人を許せない人は |
モーツァルトの許しの哲学 | |
伯爵夫人 | 女性の怒りは 長続きしないのね? | モーツァルトの女性観 | |
第9場 | 伯爵 |
切り札を駆使して逆転を狙うぞ! |
伯爵は大逆転を狙ってフィガロに手紙のことを問いただす |
第10場 | フィガロ |
あそこに閉じこもって このかわいい顔を待っていると... あなた様が叫んでおられましたので...あの手紙のことで... |
フィガロの機転を利かせた弁明 |
アントニオ | じゃお前のだな この紙は お前が落とした… |
庭師アントニーオが現れて2階から人が降って来て植木鉢が壊れたと訴える |
|
フィガロ |
ああ そうか!これは辞令ですよ さっきあの子が俺に渡した |
次々に起きる難題を、フィガロはうそと機転で窮地を切り抜ける |
|
第11場 | マルチェリーナ |
結婚をするという この男は私と契約を交わしました 最後の7重唱:これこそがシンフォニー、オーケストラと歌手たちが織り成す最高のハーモニー |
伯爵の最終兵器 |
第三幕
シーン | 配役 | 台詞 | 状況 |
第1場 | 伯爵 |
これはいったい 何と言う混乱だ! 匿名の手紙... メイドは衣裳部屋に閉じ籠り... わが妻は錯乱し...男が飛び降りるバルコニーから庭に.. |
伯爵の混乱 |
第2場 | 伯爵夫人 |
さあ 勇気を出して 彼に言うのよ あなたが庭で待っていると |
伯爵夫人は夫の愛を取り戻すため、自分がスザンナに変装しようと決心する |
伯爵 |
(気付け薬を返そうとするスザンナに) |
夫人に頼まれたスザンナが夜の逢引に応じることを伝えると伯爵は喜ぶ |
|
スザンナ |
マルチェリーナに支払いますわ あなたがあたしに約束してくださった持参金で… |
伯爵に気を持たせるスザンナ
動揺するスザンナは二重否定の答えを間違える |
|
スザンナ |
殿さま 女はいつでも
ハイと言える時を待っているのです |
スザンナの名言 | |
スザンナ |
いいえ それは口実でした そうでもなければお話もできませんでしたから |
伯爵夫人に気付け薬を!は伯爵に近づくための口実 | |
伯爵 | かわいい奴め! | 伯爵はスザンナを落とせると確信 | |
第3場 | スザンナ |
弁護士なしでも あなた もう訴訟に勝ったのよ |
してやっったりのスザンナがフィガロに耳打ちするのを聴いた伯爵は陰謀が進んでいることを悟る |
第4場 | 伯爵 |
もう訴訟に勝ったのよだと!いったいどういうことだ! |
ますます混乱する伯爵は召使たちに勝手はさせないと怒る |
第5場 | ドン・クルツィオ |
支払うか、結婚するかですぞ。 |
訴訟はマルチェリーナの言い分を認めた。 |
マルチェリーナ |
右腕を刻印されたこての痕ね… ラファエッロよ |
フィガロがマルチェリーナとバルトロのさらわれた息子だったことが判明し、スザンナもその事実を喜んで受け入れる |
|
第7場 | バルバリーナ |
あたしたち あんたに同じ服を着せたいのよ |
バルバリーナと村娘たちが伯爵に花を贈る |
第8場 | 伯爵夫人 |
気になるわ どんな風に伯爵が 申し出を受け入れたのかが |
伯爵夫人は夫との愛が戻ることをに望みをかけて、スザンナに手紙を口述筆記させる |
第9場 | 伯爵夫人 |
私が言う通り書いて あとは全部 私が自分でやるから 今夜、ため息をつく。林の松の木の下で。 |
伯爵夫人の指示てスザンナは具体的な逢引の場所を指定した誘いの手紙を書く 松は繁栄の象徴 |
第10場 | 伯爵夫人 |
さあ このピンを取って 封に使えるでしょ |
手紙を受け取った事を確認するためにピンの返却を要求 |
第12場 | バルバリーナ |
殿さま いつも私におっしゃって下さいますよね |
伯爵は娘たちの中にケルビーノを発見して怒るが、バルバリーナに弱みを突かれてケルビーノと結婚したいという彼女の願いを許す |
第13場 | フィガロ |
さあ行進曲だ 行きましょう |
楽士たちが演奏するマーチが聞こえ、フィガロとスザンナ、バルトロとマルチェリーナの二組の結婚式が行われる |
第14場 | 伯爵 |
まったく いつものことだ 女どもはどこにでもピンを突き刺すのだ |
結婚式の途中にスザンナからそっと手紙を渡された伯爵は、祝いのダンスの間にその文面を確認して密かに喜ぶ |
第四幕
シーン | 配役 | 台詞 | 状況 |
第1場 | バルバリーナ |
なくなってしまった. .困ったわ... ああ どこにあるのかしら? |
バルバリーナ伯爵から返すように言われたピンを無くして困惑している |
バルバリーナ |
「ほれ 娘 このピンを届けてくれ かわいいスザンナに |
フィガロにカマを掛けられたバルバリーナはスザンナと伯爵の逢引の場所を教えてしまう |
|
第3場 | フィガロ | 母さん! 俺は死んだぜ! |
伯爵夫人とスザンナの計画を知らないフィガロはバルバリーナの話しを聞いて、スザンナが伯爵との情事を受け入れたと思い込み悲しみに暮れる |
第4場 | マルチェリーナ |
落ち着いて!事態は深刻 だけど だからこそじっくり考えるんだ だってそうだろう まだ分かってないんだからね 誰を引っ掛けようとしてるのか |
母、マルチェリーナの助言 |
マルチェリーナ |
牡ヤギと牝ヤギは いつでも仲良し 牡の子ヤギも 牝の子ヤギとは けっして争ったりはしないよ どれほど獰猛な獣でも 森や野原では 自分の仲間には
安らぎと自由を与えるものさ わたしら 哀れな女だけが こんなに男にやさしくしているのに 不実に裏切られ続けるんだよ いつだって残酷に! |
封建体制への抵抗 マルチェリーナはあのスザンナがそんなことをする筈がないと彼女を信じ、動物のカップルの仲の良さを歌い、女性蔑視に対して抗議する |
|
第6場
第6場 |
フィガロ | あんた方はこの場所から離れないでくださいよ |
フィガロは逢引の現場を押さえるためバルトロとバジリオに見張りを頼む |
バジリオ |
私は運命に学んだ。ロバの皮で逃れることが出来るということを。 |
実力が足りないときは、ロバの皮をかぶってやりすごすことも、生きるためにはけっして卑怯なことではないというバジリオの哲学 |
|
第8場 | フィガロ |
少しばかり開きたまえ その目を |
ひとり闇で物思いに耽るフィガロは、女の魔性に騙される男たちへ警鐘を鳴らす |
第10場 | スザンナ |
とうとう待っていた時が来た |
フィガロが暗闇に隠れているのに気づいたスザンナは、フィガロを懲らしめるためにわざと逢引を待ちわびる気持ちを歌う |
第11場 | ケルビーノ |
あの帽子からすると スザンナみたいだけど |
ケルビーノが通りかかり、伯爵夫人をスザンナ跡思ってキスを迫る |
第12場 | 伯爵 |
こっちに着なさい 私の愛するお前 |
ケルビーノを追い払った伯爵も、自分の妻をスザンナと思って暗闇へ連れ去る |
第13場 | フィガロ |
美しいヴィーナスは軍神マルスと入っていった |
ヴァルカン(フィガロ)はヴィーナス(スザンナ)と軍神マルス(伯爵)がベッドに入ったところで網を被せ動けなくなった二人をさらし者にしたというギリシャ神話を引用している |
第13場 | スザンナ | これ、フィガロ 静かになさい |
絶望するフィガロの前にスザンナが夫人の衣装で現れる |
フィガロ |
こうしてあなた様の足元に |
フィガロはすぐに声でスザンナだと気づくが、仕返しに「夫人」を口説いてスザンナを激怒させる |
|
第14場 | フィガロ | はい、奥様 あなたは私の憧れです! |
やがて仲直りして二人は、伯爵が「スザンナ」を見失って戻ってきたのを見て、伯爵夫人とフィガロの浮気を演じる |
最終場 | 伯爵 | 皆の者 出合え 武器だ 武器を持て! |
伯爵は怒ってフィガロを取り押さえ、大声で従者たちを呼び集める |
伯爵 | たくらみは暴かれた 不実な女はここだ |
伯爵が東屋から妻(実はスザンナ)を引っ張り出し、これぞ浮気の現場、絶対に許さんと怒鳴る |
|
伯爵夫人 |
少なくともこの私であれば 彼らに お許しはいただけますでしょうか |
反対側からスザンナの衣装を着た伯爵夫人が現れるので皆は唖然とする |
|
伯爵 |
伯爵夫人 私を許してくれい |
伯爵は自分の非を認め、夫人に許しを乞う | |
伯爵夫人 |
私はあなたより素直ですので言いますわ 「はい」と |
夫人はうなだれる夫を優しく許し、一同は幸せな結末を喜ぶ |