コジ・ファン・トゥッテ K.588
Cosi fan tutte

モーツァルト
Wolfgang Amadeus Mozart

 

美女とはみんなこうしたもの、または恋人たちの学校

【芝居は続けなければならない…だけどその芝居が成立してはいけない】
↑これこそがこのドラマ上の葛藤であり、自己矛盾なのである。

言語イタリア語  舞台ナポリ
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ

登場人物

フィオルディリージ S

ドラベッラの姉、グリエルモの恋人

ドラベッラ MS

夜フィオルディリージの妹、フェルランドの恋人

フェルランド T

ドラベッラの恋人

グリエルモ B フィオルディリージの恋人
ドン・アルフォンソ B

哲学者

デスピーナ S

姉妹の女中(デスピーナ+スピーナ)

 

理解の助け

【一口メモ】

"Scegliete qual di noi piu vi piace."
「(相手は)私たちのどちらでも好きな方を選べ。」

「私がすべて悪かった。しかしこれで皆、賢くなれたではないか。
 さぁ手を取り合い、抱き合い、笑い合おう。」
この言葉で皆は仲直りする。
男たちは交換した相手を本気で好きになった訳ではない。成り行き上、そういうことになってしまっただけだ。
だからこそ四人は元に戻ることができる。
もしあの口説きが本気だったとしたら、たまに見られる変な演出のように…元のカップルに戻ったフリをして、実は心の中では別々の相手とつながっている…という何とも苦いエンディングになる。
そんなエンディングを喜ぶのは、下品だ。

モーツァルトはお下品な性癖だったらしいし、破天荒な人物像が思い描かれるが、その作品はどれも上質でリアルだ。
「ドン・ジョヴァンニ」と「魔笛」の間に書かれた「コシ・ファン・トゥッテ」。
前後の作品との関係を見れば、このエンディングが形而上学的な性格を持つものであることは明らかだ。

【命名】
【フィオルディリージ】
Fior-di-ligi:(fior=)「花」、(di=)「〜の」、(ligio=)「忠誠を誓った、献身的な百合
※「忠誠・献身の花」・・・姉であるフィオルディリージは妹に比べ、最後まで恋人への愛を貫こうとする。

【ドラベッラ】
Dora-bella:(dorato=)「金メッキの」、(bella=)「美しい」
※「美しい金メッキ、金箔を施した」・・・頑なな姉に比べて、とっても柔軟な妹。
 戦地へ行く恋人を見送った直後に現れた謎の外国人男性二人に、早くも興味津々の妹ドラベッラ。
 その美しさは金メッキのようだ・・

【デスピーナ】
De-spina:(de=)接頭語「低下」「否定」、(spina=)「とげ」
※「鋭さを持たないトゲ」・・・姉妹の召使いである女中デスピーナ。
 一見頼りになる器用な人物だが、結局彼女もドン・アルフォンソに騙されて、男たちの賭け事に巻き込まれているだけだ。トゲを持っていそうだが、そのトゲも人を刺すほどの鋭さはなさそうだ。

【フェルランド】
Ferrando:(ferrare=)「鉄具をつける」
※自分のことを「岩(=scoglio)」と例えたフィオルディリージと、同じ鉱物である「鉄」をまとうフェッランド・・・。

【グリエルモ】
Guglielmo:「ウィルヘルム2世」
※シチリア王国ノルマン朝の名君ウィルヘルム2世(フランス語ではギョーム2世)がモデル・・・


アリアリンク集

第1幕 僕のドラベッラならそんなことはない
La mia Dorabella Capace non è: 
フェルランド 1
ねぇ、ちょっと見て欲しいわ
Ah, guarda, sorella,
フィオルディリージ、ドラヴェッラ 2
君を残していかねばならない
Sento, oddio, che questo piede
5重唱 3
君らをデスピネッタに紹介する
Alla bella Despinetta
ドン・アルフォンソ 4
私の心は岩のように動かない
Come scoglio
フィオルディリージ  
ああ一瞬にして私の運命は変わったの
Ah, che tutta in un momento Si cangiò la sorte mia, 
フィオルディリージ、ドラヴェッラ 6
かなわぬ恋の悲しい結末を
Si mora, sì, si mora
フェルランド、グリエルモ  
さあお嬢さん方、お医者さんですぞ
Eccovi il medico, Signore belle!
ドン・アルフォンソ 8
あなたは僕の至高の女神
Dove son? che loco è questo?
フェルランド、グリエルモ 9
第2幕 女も15歳になったら
Una donna a quindici anni 
デスピーナ 10
私はもう決めてるの、黒髪の方よ
Io già decisi. 
ドラヴェッラ 11
私のハートを差し上げます
Il core vi dono, 
ドラヴェッラ+グリエルモ 12
N.23-Duetto 二重唱
il core vi dono
ドラヴェッラ+グリエルモ  
どうか許していとしい恋人
Per pietà, ben mio, perdona
フィオルディリージ  
恋はちっちゃないたずらっ子
È amore un ladroncello,
ドラヴェッラ 14
間もなく私は許婚の腕の中
Fra gli amplessi in pochi istanti 
フィオルディリージ 15
二重唱
fra gli amplessi in pochi istanti
フィオルディリージ+フェルランド  
あなたにとって僕だけです
Volgi a me pietoso il ciglio: 
フェルランド 16
大変だ許婚が帰ってきた
Che rumor! che canto è questo!
全員  
私は死に値する罪を
Ah, signor, son rea di morte
フィオルディリージ、ドラヴェッラ F