ラ・ボエーム 台詞の理解

第一幕

配役 台詞 状況
マルチェッロ この「紅海」のやつめ、俺をびしょぬれにして凍えさせやがる 

復讐のために、ファラオを溺れさせてやろう

西向きの部屋に置かれた画家マルチェッロの絵。
題材は聖書の「紅海を渡るモーゼ」

「紅海」の絵は第3幕では無残にもキャバレーの看板で使われる。

ショナール

ロドルフォ

見えんか?このお方をどなたと心得る?
ルイ・フィリップ王が俺たちの足元に

ショナールが投げた銀貨。
シャルル10世のとった反動政治により7月革命が勃発。
その後を継いだのがオルレアン家のルイ・フィリップ国王。

マルチェッロ 火をつけろ

ストーブを燃やすのに火打石を使う。
擦れば火が点くマッチは1831年フランスで誕生したが、ボエームの時代は高価すぎて貧しい学生やお針子には手が出ない。

ロドルフォ

いいや、この紙を灰に変えて、霊感を天に返してやるのさ

部屋を暖めるには原稿では不十分。しかも書かれていない白紙ではなくて、わざわざ苦労して書いた原稿を燃やすのは・・・
「部屋を暖めること」が目的なのではなくて、「自らの血と汗がにじんだ青春と決別すること」を表している。

ショナール

俺は3日間ずっと弾きっぱなしだった。
そしてメイドを誘惑して、毒パセリを燃せたのさ!

パセリは鳥類、特にオウムに与えては駄目。
音楽家ショナールはイギリス人に雇われてオウムの鳴き声をかき消すよう3日間もピアノを弾き続けた挙句、オウムにパセリを食べさせて毒殺した。

ショナール

ロリートのやつ、くちばしを広げてソクラテスみたいに死んだんだ!

ソクラテスは賢者との論争の末に、「知っていると思い込んでいること」は「理解していないこと」であることを証明する。恥をかかされた賢者たちは怒ってソクラテスを裁判にかけ、死刑の判決を与える。投獄されたソクラテスは、毒人参の杯で飲んで死んだというエピソードにちなむ。

ベノア 私も歳はとりましたが、まだまだイケますよ Benedetta: 祝福されたの意味。
ロドルフォ アスペッティ シニョリーナ
待ってください。お話ししても良いですか?
 
ミミ

皆は私をミミと呼びます。でも私の名前ははルチアです。
4月の初めての太陽の口づけは私のものなのです。

ルチアとはラテンゴのLUX(光)
古代ローマでは「夜明けの最初の光の子」に名付けられる名前。

第二幕

配役 台詞 状況
ミミ カフェ・モミュス

カフェ・モミュスのあった場所
ポン・ヌフを越えた対岸。

ミミ 心の中を読み取れる人は、愛のことも良く知っているのね。  
コルリーネ サラミだ!

女嫌いのコルリーネの女性観
ミミを仲間として受け入れつつも、ロドルフォに新しい恋人ができたことを素直に喜べない。
「サラミ」はオスカー・ワイルドの悲劇「サロメ」に掛けた言葉。

マルチェッロ

水浴びのスザンナだ!

「スザンナと長老たち」、別名「スザンナの水浴」
ティントレットの名画。主題は旧約聖書のダニエル書で語られているスザンナの物語。


第三幕

配役 台詞 状況
 

アンフェール(地獄)門

居酒屋の看板はマルチェッロの「紅海の横断」
ロドルフォ

願っていたい 永遠に冬が続くことを!

ミミこそロドルフォの中で消えかかっていた「火」を再び燃え上がらせてくれる存在。

しかし、その命の火は第3幕のフィナーレで再び燃え上がるも、ラストシーンでそのともしびは完全に消えてしまう。


第四幕

配役 台詞 状況
コルリーネ

古い外套よ、分かっているな
我々は地上に残るが何時は聖なる山へ登るのだ

外套(汚いコート)はボヘミアンの象徴。
自らのシンボルを売るということは・・・
単に慣れ親しんだ服を捨てるということは「哲学者であることを捨てる」というほどの決意。
ところが外套をお金に替えて部屋に戻った時にはミミは既に息絶えている。最後までボヘミアンであり続けたはずのコルリーネがボヘミアンとしての生き方に見切りをつけたこの虚無感こそがこのオペラ最大の悲劇。

ショナール

哲学者よ!  その通りだな

いつも本ばかり読んでいて、世の中や人生を冷静に揶揄してきたコルリーネは哲学を捨てることを決意。
そんなコルリーネに感動したショナールの言葉。