天皇皇后両陛下、お集まりの皆様

 

  国人として、またポーランド人として、本日の祝典にてご挨拶できますことを光栄に存じます。天皇陛下御即位20年を祝し、レフ・カチンスキ ポーランド共和国大統領、ドナルド・トゥスク ポーランド共和国首相をはじめ、ポーランド国民からの、心からのお祝いをお伝え申し上げます。陛下の益々のご健勝とご多幸、そして日本にとりまして実りある成果をもたらしつつ、陛下が今後も永きにわたり御在位されますよう、衷心よりお祈り申し上げます。20年前に平和の時代に生まれた子供たちは、すでに一世代と言ってもよい、成人を迎えました。

  2002年、待ちに待った両陛下によるポーランド公式ご訪問が実現され、両陛下をお迎えできましたことは、ポーランド国民にとりまして大きな光栄であり、喜びでありました。ご訪問頂いたワルシャワやかつての首都であったクラクフの地で、両陛下をお迎えできたポーランド国民の熱狂と歓喜の声はいまだに忘れられません。

  ポーランドと日本皇室の歴史の始まりは、1925年に朝香宮鳩彦(あさかのみややすひと)殿下が、その5年後の1930年には高松宮宣仁(たかまつのみやのぶひと)殿下と喜久子妃殿下が訪問されたことに遡ります。その際、ポーランドへのご訪問を迎え入れたのが、ポーランド共和国建国の父である当時の国家元帥、ユゼフ・ピウスツキでした。両国の交流の歴史は非常に古くから始まりますが、盛んになってきたのはおよそ100年前からであったと言えましょう。ポーランドは自国の再生を夢見ながら、日本人の内に潜む個人主義とは相反(あいはん)した、全力を国家の為に傾ける気高い精神に感嘆せずにはいられませんでした。日本とポーランドの間で国交が樹立されてから今年で90周年を迎えます。皇后陛下がポーランド人の作曲家フリデリック・ショパンの作品を好まれ、ご自身でも演奏されるということも伺っております。

  後に、古(いにしえ)より続くある美しい歌について一言申し上げたいと思います。小石が寄り集まってやがて巨大な巌(いわお)となり、その長い時の流れの中で巨大な岩に苔(こけ)むすように、揺ぎなさの神髄を、そして自然に潜在する悠久を私たちに語りかけてくる歌。「君が代」で始まるこの歌の言葉と調べは私たちポーランド人に深い感銘を与え続けています。

  の歌と、田植や稲刈りをなさる天皇陛下、そしてご養蚕をなさる皇后陛下のお姿は私の記憶に深く刻まれ、そのお姿を思い出しては、純粋で美しい生活の営みや自然との関わりによる国民と君主の結びつきがいかに重要なものであるのか、日々思考を紡(つむ)いでいる次第でございます。

  成の世が千代に、そして八千代に続きますよう、お祈りいたしております。

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