蝶々夫人
Madama Butterfly


 

巨匠ヴェルディ亡き後、オペラの世界は貴族社会や神話を舞台にしたものから一般の人々による現実の物語を題材にしたものへと変化していきます。
中でもプッチーニ は独特の美しいメロディーで可憐なヒロインを描くことで、
「ラ・ボエーム」「トスカ」そして「蝶々夫人」など多くの名作を残しました。

明治初期の日本を舞台にしたこの作品は、小説から芝居へと形を変え、それを見たプッチーニがぜひ作曲したいと言い出してオペラになったものです。

このオペラのヒロイン蝶々さんは、決して異国人の夫に裏切られて絶望する
かよわい日本女性ではありません。
過酷な運命の中でひたすら愛を貫いていく気高さが描ききられているからこそ、世界中の人々の胸を打つのです。
またこのオペラの中には、「さくらさくら」「お江戸日本橋」「君が代」などの日本のメロディーや、アメリカ国歌までもが効果的に使われています。

 

●主な登場人物●

蝶々さん 長崎大村の武家の娘(ソプラノ)
ピンカートン アメリカの海軍士官(テノール)
シャープレス 長崎駐在のアメリカ領事(バリトン)
スズキ 蝶々さんの女中(メゾ・ソプラノ)
ゴロー 結婚仲介人(テノール)
その他、蝶々さんの伯父、神官、ヤマドリ公爵、親戚、友人など


第2幕(第1場)

3年後。
夫ピンカートンが日本を去る前に言った「駒鳥が巣を作る季節に戻る」
という言葉を頼りに、蝶々さんはじっと夫の帰りを待っている。
その日を夢見ながら蝶々さんはアリア「ある晴れた日に」を歌う。

 

 (ある晴れた日に) 

いつか 私たちは見るでしょう
立ち上る 一筋の煙を
果てしない 海の彼方に
そして 船が姿を現すわ
その 白い船は 港に入り
礼砲を轟かせる
見えて?
あの方が 戻っていらしたわ!
私は お迎えには行かないの
行かないのよ
私は あの丘の端まで行って
待つわ
ずっと 待っているの
どんなに長いこと待っていても
辛くなんかないわ
そして 賑わう人々の中から
豆粒ほどに小さく見える人が
一人 抜け出して
丘を 登っていらっしゃるの

 

3年後、ピンカートンはアメリカで正式に結婚した妻を連れて再び日本に帰って来ます。
すべてを察した蝶々さんは、ピンカートンとの間に生まれた子供を彼らに託し、父から譲り受けた守り刀で自らの命を絶つのでした。

ベンジャミン・フランクリン・ピンカルトン

エイブラハム・リンカーン号


ジャンニ・スキッキ